心に住むオラフ

昨日はプノンペンの日本人会の忘年会だった。   私は普段プノンペンで、子どもたちとスポーツで関わる仕事をしているのだけど、その中で最も大きなイベントが昨日あって。それは私が新体操を教えている子どもたちの発表会だった。   高校時代、新体操部だった私は、当時から踊るよりコーチをしていた時の方が楽しかった思い出が今に繋がっているのだけど。   今まで、プノンペン内でもう5回以上は発表の場があったのに なぜだか今回はわけのわからない圧迫感を感じていて   昨日は押しつぶされそうになっていた。  

    会場が大きいからか 今までで一番人数が多いからか 短い練習で演技を押し込んでしまったからか 単純に人の多い場所が苦手だからか いつも出演してる子どもがお休みだからか いろんな事情で全員の出演ができなかったからか

    とにかく訳のわからないなにかに押しつぶされそうになってしまって 必死に子どもたちの前で笑顔を作っていたけど 凍ったような心臓をしていたと思う。   

リハーサルを無事に終えたものの なんだか変な緊張感は止まらなくて

 

ふらふらした足で会場を後にした。 とても開演まで会場の空気の中にいられなかった。

 

赤ちゃんたちが遊ぶようなプレイルームに座った。 できるだけ小さな空間に逃げたくなった。

 

 

座ってしまったら、立ち上がるのが苦しくなった。

いつもの勢いはどこにいったのか   なんとか会場で笑顔を作る。 本当はちょっと苦しかった。

 

 

 

本番前になって狭い廊下でほんの少し練習しようという時

 

先生私のリースがない!とか 先生リボンが取れちゃった!とか 先生口紅塗って!とか。 先生トイレ行きたい! 先生踊り忘れちゃった!!!とか・・・

 

出番は近いしで      

「もうやばい・・・誰か助けて」と泣きたくなった 正直焦っていた私。そんなとき     

 

突然衝撃と共に後ろに倒れそうになった      ある一人の子どもが

私の胸に飛び込んできたのだ。 「先生ーーーー!!!」

 

     演技の指導に必死になって慌てていた私は一瞬頭が真っ白になってしまって    "お願い今はやめて!今からみんなで練習するの!終わったらにして!!!" と叫びそうになった、その言葉を飲み込んだ。 その時初めて気がついた。     

 

私の呼吸が 小さく震えていたのだ

 

 

私は何も言葉が出てこなくて、少し深く呼吸をしなおして 少し彼女の頭を撫でると

     彼女は何も言わずに数秒、ただ嬉しそうに私を抱きしめた後 満足したような顔をして自分の立ち位置に戻って 何もなかったかのようにポーズの位置についた。      

         

     しばらくして発表の時間がくる。        正直、本番も演技の合図を送るのに必死だった私は 客席ほどの感動を取りこぼしてしまったのだけど

 

結果発表は無事に済んで、子どもたちは大喝采を浴びた。 きっと今までの発表会の中では一番大きな拍手だったんじゃないかと思う。

 

子どもたちが退場した後、振り返って客席をみると

      たくさんの人が私にまで、拍手を送ってくれていた。 呼吸の震えは止まっていたけど 今度は、胸が感動で震えるのを感じていた。    

 

終わった後、

子どもたちは無邪気に笑い合っていた。そう、この笑顔が私は大好き。

 

 

そして今度はあるお母さんが 「まい先生〜〜〜いつも感動をありがとう」 と目に涙を溜めてハグをしてくれた。         

いつも先生としてみんなの前に立っているときは 元気いっぱいの先生でいられるように 優しい先生でいられるように必死だった私がいた。

 

できるだけ、子どももお母さんも私も、みんなが幸せを感じられるクラスを作りたいって 演技の構成から曲の選び方もこだわって この1年は走った。

      

でも本当は、みんなの前で先生のように振る舞うそんな私は     ただ一人の人間で 不安や緊張に潰されそうになる日を隠していた。      

 

そんな私は誰かに、 隠した不安を抱きしめてほしかったのかもしれない。    

 

       その時、やっと気がついた。 ああ、私の仕事は、

  演技を指導することではない。  

新体操の先生でもない。  

 

 

   誰かに、感動を届けることなんだ。     

 

やっと心が溶けたように 喉の奥がぎゅっと熱くなって

溢れそうになった涙の熱い温度を 閉じた目の奥で味わった。

      

 

演技が終わった後、 数人の方々が話しかけてくれた。     「私の娘も、バレエをずっと習ってまして、もう結婚して子どももいるんですけど、懐かしい思い出です。あの頃の小さかった娘を思い出しました。ありがとう。」

 

     司会者の方は、 「2人の娘がいるんですが、毎週土日は新体操の大会の送り迎えをやっていた事をふと思い出しました。」  素敵な思い出を教えてくれた。

 

 

今日出演した子どもたちに関係のない人にも 優しい思い出を思い出させてくれるきっかけになったことを始めて知った。

 

ああ、良かった。こんなところにも優しい気持ちが繋がっていたんだ。って 幸せな気持ちになった。   レッスンしてきた自分のことを、2016年、初めて褒めた。 うん、よく頑張ったわたし。

 

 

 

 

 

そして、この日一番美しく見えたものがある。

 

もちろん なんども練習した最後のポーズや、 いつもより嬉しそうな子どもの笑顔もとても素敵だったんだけれど。

 

 

それはホテルの正面に飾られた大きなクリスマスツリーの前に 家族で並んで記念写真を撮る姿だった。

 

 

ドレスアップしたお母さんの優しい瞳 プノンペンで働くお父さんの活き活きとした姿勢 少しすました顔をしてはにかむ娘。

    そして手には発表で使ったリースを握って。     

 

     遠い遠い先、彼女たちが大人になった頃 お父さんは、クリスマスが来たら思い出すかもしれない。

    ああ昔、まだ娘が小さかった頃に 発表会のあと、みんなで写真を撮ったなぁって。

    写真を見るたびにお母さんは思い出すかもしれない。 新体操の送り迎えに、娘の小さな手を繋いで連れて行ったわって。

      会場であった男性のように、 他の子どもたち踊っているのをみて 小さかった娘を思い出すこともあるかもしれない。

     

 

ぁあ、私がサンタクロースだったら。 いつかふと思い出せるような家族の思い出を プレゼントし続けよう。

     

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p.s     昨日の余韻に浸りながら 紅茶1杯とラテ2杯飲んで気づいたことがある

 

  今回の曲は Do you wanna build a snowman

  という曲だった。アナと雪の女王の、雪だるまをつくろうっていう歌だったのだけど。

 

 

 

オラフは映画でこういった

 

僕はオラフ!ぎゅーって抱きしめて!

Hi,I'm Olaf and I like warm hugs!

 

 

 

 

 

もしかしたら私の中のオラフが「抱きしめて!」と叫んでいたのかもしれない。   子どもからも、保護者の方からも暖かいハグをもらった私。 こんな幸せなことはない。    

12月でも夏のプノンペンでは雪だるまは作れないけど。^^

   

    続き→ https://youtu.be/1APv9t_LyOY  

 

 

 

 

 

 

 

 

*石原舞インタビュー記事

アセナビ

http://asenavi.com/archives/6169

開発メディアganas

http://www.ganas.or.jp/20160302flyhigh/

 

iammai